丘の上に、一台の古い風車が立っていた。
ただ静かに回り続けていた。
「風車が聞いている風の音は、ぼくたちの知らない遠い国から来るんだ」
誰かが言った。
月が明るかった。
風車の羽根は銀色に光りながら回っていた。
耳を澄ますと、風の中にさまざまな音が混じっていた。
海辺の波の音。
遠い町の鐘の音。
誰かの笑い声。
まだ会ったことのない人々の話し声。
風はただ吹いているだけではない。
世界の記憶を運んでいるのだ。
また誰かがいった。
キリギリスと風車が決闘をしたのは、こんな月の晩だった。
どこか遠い草原で暮らすあのキリギリスの歌が、風に乗って届いてくる。
風車は回り続ける。
相棒、元気か、朴念仁、世界が変わらなければ、俺が変える。
いさ゜、勝負だ。
風の中にある無数の声を、羽根で受け止めながら、怪人は笑う。
想いは風に乗り世界を巡り、風車に集まってくる。
物語は、まだ序章だ。
キリギリスはそのたびに空を見上げる。
いざ行かん。
すると風が少しだけ優しく、吹くのだった。















