銀河ビズ-WEBマガジン「きゅん」

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最新号11月10日配信予定
イラスト
GingaBiz
編集部より

「放送部と炎のナレーション」
その高校の放送部には、不思議な言い伝えがあった。
文化祭の前夜、誰もいない放送室で原稿を読むと、その声に特別な力が宿るというのだ。
もっとも、ほとんどの生徒はそんな話を信じていなかった。
放送部二年の遥も、その一人だった。
彼女は原稿を書くのは好きだったが、人前で話すのは苦手だった。
声が震える。
緊張すると早口になる。
だから毎年、文化祭の司会役は別の部員が担当していた。
ところが、その年は違った。
司会役の先輩が急に体調を崩し、遥が大役を任されることになったのだ。
文化祭前夜。
誰もいない校舎に残り、遥は放送室で原稿を読んでいた。
窓の外には夕焼けが広がっている。
グラウンドの向こうでは、文化祭の準備をする生徒たちの声が聞こえた。
原稿にはこう書かれていた。
「明日は一年に一度の文化祭です。」
それだけの文章なのに、なぜか胸が熱くなった。
何週間もかけて準備した人たち。
夜遅くまで絵を描いた人。
舞台の練習を繰り返した人。
失敗して落ち込んだ人。
笑い合った人。
そのすべてが、明日の一日に詰まっている。
遥はもう一度マイクに向かった。
今度は誰かに聞かせるためではなく、自分自身に言い聞かせるように。
すると不思議なことに、声の奥に小さな炎が灯った気がした。
派手ではない。
大きくもない。
けれど確かに燃えている。
翌日。
開会式で遥はマイクを握った。
緊張はしていた。
それでも逃げなかった。
放送室から流れた声は校庭へ、体育館へ、教室へと届いていく。
「皆さん、本日は文化祭へようこそ。」
その瞬間、会場から大きな拍手が起こった。
遥は思った。
炎のナレーションとは、激しく叫ぶことではない。
言葉の向こうにある誰かの思いを、自分の声でそっと運ぶことなのだと。
放送室の窓の外では、秋の空が青く澄み渡っていた。

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