古いアパートの階段を上りながら、私はポケットの中の鍵を確かめた。約束の時間より少し早い。
ドアの向こうから小さく音楽が聞こえた。
部屋の中の灯りが、とても愛しい。
ノブを回すやいなや、彼女に抱きしめられた。
部屋には読みかけの本が開いたまま置かれ、窓辺には小さな花瓶があった。時間の流れ方があの時のままだ。
しばらく話をして、しばらく黙った。
彼女は、そっと私の小指を握った。
強くでもなく、弱くでもなく。
切れてしまいそうな糸を確かめるように。
私は、彼女にキスをした。
その感触が、まだ胸に残り続けている。
外では雨が降り続いてる。
ああ、
この部屋の中だけは、長い旅を終えた人たちのための灯りがともっている。まだ。今も。
暖かい、僕たちの夢。
2014年8月10日UP















