銀河ビズ-WEBマガジン「きゅん」

kyun.biz
最新号11月10日配信予定
イラスト
GingaBiz
編集部より

荒野を走るランナーがいた。
朝も昼も、そして夕暮れも。
彼はどこへ向かうのか誰も知らない。
ただ風だけが、その背中を追いかけていた。
ある晩、ランナーは小さな町にたどり着いた。
町は祭りの夜だった。
屋台の灯が並び、音楽が流れ、人々が笑い合っている。
その人混みの中に、一人の女性がいた。
耳には小さな星のピアス。
夜空のかけらを閉じ込めたような、静かな輝きだった。
ランナーは不思議と足を止めた。
何年も走り続けてきたのに、立ち止まったのは久しぶりだった。
「どこへ行くのですか」
女性が尋ねた。
「わからない」
ランナーは答えた。
「ただ走っているんです」
女性は少し笑った。
そして夜空を指差した。
「あの星たちも、どこかへ向かっているように見えます。でも、本当はそこで輝いているだけかもしれません」
祭りが終わる頃、二人は丘の上にいた。
風が草を揺らし、遠くで犬の鳴き声が聞こえる。
星のピアスは月明かりを受けて、小さく瞬いていた。
ランナーは初めて思った。
急がなくてもいいのかもしれない、と。
走ることだけが旅ではない。
立ち止まり、誰かと同じ空を見上げることもまた旅なのだと。
夜明け前。
ランナーは再び荒野へ向かった。
女性は見送るだけだった。
別れの言葉も約束もない。
けれど振り返ったとき、丘の上で揺れる星の光が見えた。
それはピアスだったのか、
本物の星だったのか、
ランナーにはわからなかった。
ただ、その光が消えない限り、
どんな荒野も一人ではないような気がした。

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